Amazon Web Services(AWS)はベトナム初となる AWS Local Zone をハノイで正式に提供開始しました。国内企業向けのニュースとして取り上げられることが多いものの、ベトナムに拠点を持つ、あるいはベトナムのユーザーにサービスを提供する日本企業にとっても、見逃せない動きです。
はじめに明確にしておきたいのはこれはベトナム国内に完全な AWS リージョンが開設されたわけではないという点です。ハノイの Local Zone(ap-southeast-1-han-1a)はAWS アジアパシフィック(シンガポール)リージョン(ap-southeast-1)の拡張という位置づけです。コンピューティング・ストレージ・ネットワークといった主要サービスをエンドユーザーの近くに配置し、低遅延と国内データ保管を実現するためのものであり、既存のクラウド基盤を完全に置き換えるものではありません。
ハノイ Local Zone でサポートされる サービス とは?
AWS によると、ハノイ Local Zone は現在以下をサポートしています。
- Amazon EC2(C7i、M7i、R7i インスタンス)
- Amazon ECS
- Amazon EKS
- Amazon VPC
- AWS Direct Connect
- Application Load Balancer
- Amazon S3(One Zone-IA)
- Amazon EBS および EBS Local Snapshots

特筆すべきはハノイがアジアパシフィック地域で Amazon S3 と EBS Local Snapshots をサポートする初期の Local Zone の一つである点です。これにより、データのバックアップをベトナム国内で行うという選択肢が生まれます。
一方で、より高度な AWS サービスの多くは引き続きシンガポールリージョンで稼働します。したがって Local Zone は既存アーキテクチャを置き換えるものではなく、低遅延が求められるワークロードや国内データ保管を補完する位置づけとして捉えるのが適切です。
基本的な考え方:コアは現状のまま、エッジをハノイへ
ハノイ Local Zone を理解する上で最もわかりやすいのはベトナムに関わりを持つ多くの企業に共通する一つの原則です。すなわち、中核となるシステムとデータは既存のリージョンに保持したまま、ベトナムのユーザーに向き合う部分をハノイに配置することで、遅延を抑え、国内データ要件にも対応するという考え方です。
日本企業にとっての活用イメージ
多くの日本企業は本番環境を東京リージョンで運用しながら、ベトナムに長年の拠点やユーザー基盤を持っています。ハノイ Local Zone を活用すれば、コアシステムは日本に残したまま、ベトナム向けのフロントエンドや処理層をユーザーの近くに配置できます。これは日本とベトナムの間で広く定着しているオフショア開発モデルの自然な発展形といえます。
たとえば、ベトナムのユーザー向けアプリケーションであれば、UI やリクエスト処理をハノイに配置してアクセス速度を高めつつ、重要なデータは引き続き東京のデータセンターで管理する、といった構成が考えられます。これにより、セキュリティ・運用・コンプライアンスの要件を維持しながら、ユーザー体験を向上させることが可能になります。
その他の市場での活用
同じ原則は日本以外の市場にも当てはまります。
- シンガポール企業にとっては最もシームレスなケースです。ハノイ Local Zone はシンガポールリージョン(ap-southeast-1)そのものの拡張であるため、複雑なマルチリージョン構成を組まずに、同一の API・管理ツール・課金モデルのままハノイへ拡張できます。
- 香港・オーストラリア企業はベトナムに事業やユーザーを持ちつつも、それぞれ別のリージョン(香港、シドニー)で運用しているケースが多く見られます。これらの企業にとって、ハノイ Local Zone はリージョンをまたぐハイブリッド構成を可能にします。
- ドイツ・欧州企業はデータ主権(GDPR)に関する厳格な要件を負うことが一般的です。この場合は個人データをフランクフルトなど欧州リージョンに保持して GDPR 準拠を維持しつつ、機微情報を含まないフロントエンドや処理層をハノイに配置する構成が適しています。
いずれの場合も共通するのはリージョンをまたぐハイブリッド構成は「接続すればすぐに使える」ものではないという点です。ネットワーク設計、データ同期、ワークロードの適切な分離が必要であり、特に本国市場のコンプライアンス要件とベトナムの国内データ要件の双方を両立させる際には慎重な設計が求められます。
ベトナム国内市場について
ベトナム国内企業にとっての効果は直接的です。Web・モバイル・EC・リアルタイム・ストリーミングといったワークロードの低遅延化に加え、国内でのデータ保管という選択肢が得られます。実際に、VIB や VPBank といった大手銀行、Trusting Social のような fintech 企業など、ベトナムの主要組織がすでにハノイ Local Zone の活用を始めています。
Haposoft の視点
Haposoft は日本・シンガポール・香港・欧州・オーストラリアといった各市場のお客様に伴走するテクノロジーパートナーであり、同時にベトナム国内の運用環境とコンプライアンス要件を深く理解しています。その立場から、AWS Local Zone ハノイはベトナムに拠点を持つ企業にとって価値あるアーキテクチャの新たな選択肢になると考えています。
本質的な価値はインフラそのものではなく、正しく設計することにあります。どの部分をハノイに置き、どの部分を本国リージョンに残すか。性能を確保しながら、双方のコンプライアンス要件をいかに満たすか。これはまさに、国際市場とベトナムをつなぐ橋渡しの領域であり、ISO 27001 および ISO 9001 認証を持つ Haposoft がお客様に伴走できる部分です。
ハノイ Local Zone はオフショア開発モデルの本質を変えるものではありません。しかし、アーキテクチャの選択肢、性能の最適化、そして将来的な現地要件への対応力という点で、新たな可能性をもたらします。Haposoft は今後も AWS の最新情報を注視し、お客様のビジネスと技術のニーズに最も適したソリューションをご提案してまいります。





