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Amazon S3によるVODデータ最適化:放送業界向け動画ストレージの活用

hapo
Quoc Viet
2025年11月12日
15分で​読む
Amazon S3によるVODデータ最適化:放送業界向け動画ストレージの活用

オンデマンド配信​(VOD)​コンテンツが​増加する​中で、​放送事業者は​ストレージ容量の​拡大と​アクセス速度の​低下と​いった​課題に​直面しています。
本記事では、​Amazon S3を​利用した​動画ストレージモデルを​用いて、​スケーラブルかつ安全で​コスト効率の​高い​VOD環境を​構築する​方​法を​紹介します。

Amazon S3が​VODワークフローに​適している​理由

Amazon S3は、​2006年3月14日に​提供が​開始された​パブリッククラウドストレージの​先駆的サービスの​一つです。​初期の​APIバージョン​(2006-03-01)は​現在も​維持されつつ、​ライフサイクル管理、​自動階層化、​コンソール機能強化など、​長年に​わたって​進化を​続けています。​現在では​単なる​「オブジェクトストレージ」ではなく、​複数リージョンに​対応した​レプリケーション、​ログ管理、​分析機能を​備えた​グローバルな​プラットフォームに​成長しています。​Wikipediaに​よると、​S3に​保存されている​オブジェクト数は​2007年の​約100億個から、​2023年には​4,000億個以上に​増加しており、​世界的な​動画配信需要に​応じて​スケールしている​ことが​わかります。

主な​技術的特徴:

  • スケーラビリティ:使用量に​応じた​従量課金で、​事前容量設定は​不要。

  • 耐久性:99.999999999%の​データ​耐久性を​実現。

  • コスト​柔軟性:アクセス頻度に​応じた​複数の​ストレージクラスを​選択可能。

  • AWS​連​携性:CloudFront、​Lambda、​Athena、​Glueなどと​容易に​統合。

  • セキュリティ・コンプライアンス:バージョニング、​Object Lock、​CloudTrailに​よる​監査ログ対応。

これに​より、​新規コンテンツは​高速に​アクセス可能、​アーカイブデータは​安全か​つ低コストで​保管可能と​いう​バランスの​取れた​構成を​実現しています。

ソリューションアーキテク​チャ:マルチティア構成に​よる​VODストレージ

放送チームでは、​毎日​約50GB​(年間約18TB)の​新規録画データを​扱う​ため、​Amazon S3を​中心に​VODストレージシステムを​構築します。​新規アップロードは​まずS3 Standardに​保存し、​古い​動画は​自動的に​Standard-IAや​Glacierなどの​低コスト階層に​移行します。​また、​Cross-Region Replication​(CRR)に​より​別リージョンへ​自動バックアップを​行い、​バージョニングで​変更履歴を​保持します。

この​構成に​より、​月間コストを​半減し、​ファイルの​移動や​管理作業を​自動化する​ことが​可能に​なりました。

(参考)

AWSのベストプラクティス
AWSのベストプラクティス

システム構成概要

システムは​明確な​役割を​持つ複数の​コンポーネントで​構成されています。

  • プライマリS3バケット​(シンガポールリージョン)
    すべての​新規動画は​まず​この​バケットに​保存されます。​編集者や​プロデューサーが​数か​月間アク​セスし、​再利用や​再編集に​使用します。

  • ライフサイクルルールに​よる​自動階層化
    アップロードから​3か​月後、​動画データは​自動的に​低コストの​ストレージクラスへ​移行します。
    ルールベースで​自動処理される​ため、​手動での​管理は​不要です。

  • クロスリージョンレプリケーション​(東京リージョン)
    新規オブジェクトは​すべて​別リージョンへ​自動複製されます。​災害発生時にも​データを​復旧可能です。

  • アクセス制御と​バージョニング
    IAMポリシーに​より​アクセス権限を​制御し、​バージョニング機能で​編集履歴を​保持します。

この​構成に​より、​新しい​動画は​高速アクセスを​維持しつつ、​古い​動画は​安全か​つ低コストに​保管できます。

AWSストレージクラスに​よる​最適化

動画の​ライフサイクルに​応じて、​最適な​ストレージクラスを​自動的に​使い分ける​ことで、​コストを​最小化できます。​初期段階では、​新しく​アップロードされた​ファイルは​S3 Standard に​保存され、​編集者が​編集や​放送スケジュール調整の​ために​頻繁に​アクセスします。​数か​月後、​ファイルが​ほぼ確定すると、​S3 Standard-IA​(Infrequent Access)​へ​移行します。​この​クラスは​同じ​高速アクセスを​維持しながら、​コストを​ほぼ半分に​抑える​ことができます。​アーカイブが​増えるに​つれ、​ほとんど​使用されない​古い​映像は​自動的に​ S3 Glacier Instant Retrieval に​移行し、​必要な​ときには​すぐに​取り出せる​状態で、​長期間​ごく​低コストで​保管されます。​法令遵守や​記録保存のみを​目的と​する​コンテンツは、​必要な​保持期間に​応じて​ S3 Glacier Flexible Retrieval または​ S3 Glacier Deep Archive に​安全に​保存する​ことができます。

このような​階層化構造に​より、​ストレージを​効率的かつ​予測可能に​維持できます。​データが​古くなるに​つれて​コストは​段階的に​下がりますが、​すべての​ファイルは​いつでも​取得可能な​状態に​保たれます。​これは、​従来の​オンプレミス型システムでは​ほとんど​実現できない​柔軟性です。​この​仕組みに​よって、​放送事業者は、​VODライブラリの​拡大に​伴っても、​必要以上​に​高性能ストレージに​コストを​かける​ことなく​効率的に​管理できるようになります。

  ストレージクラス

  利用ケース

  アクセス速度

 コストレベル 

  標準的な​保持期間  

  S3 Standard

  新規アップロード・頻繁アクセス動画

 ミリ秒

 高

 0〜90日

  S3 Standard-IA

  再利用頻度が​低下した​動画

 ミリ秒

 中

 90〜180日

  S3 Glacier Instant Retrieval 

  過去動画​(即時アクセス可能)

 ミリ秒

 低

 6〜12か​月

  S3 Glacier 


 

  長期保管向け​(低頻度アクセス)

 数分〜数時間

 非常に​低

 1〜3年

  S3 Glacier Deep Archive

  履歴・法令保存用データ

 数時間

 最低

 3年以上

Amazon S3 ライフサイクルポリシーに​よる​データ階層化の​自動化

動画コンテンツが​増えて​数テラバイト規模に​なると、​どの​ファイルを​低コストストレージへ​移行すべきかを​手動で​管理する​ことは​現実的では​ありません。​そこで、​Amazon S3 の​ライフサイクルポリシーを​設定し、​オブジェクトの​保存期間に​応じて​ストレージ階層を​自動で​移動する​仕組みを​導入します。​この​設定に​より、​手作業での​管理が​不要と​なり、​データの​年数・アクセス頻度に​応じて​適切な​ストレージクラスに​配置されます。

ルールは​ vod-storage-bucket 内の​すべての​オブジェクトに​適用されます。​最初の​3か月、​動画は​ S3 Standard に​残り、​編集者や​プロデューサーが​再編集や再放送の​ために​頻繁に​アクセスします。​90日後、​ライフサイクルルールに​より、​ファイルは​ S3 Standard-IA に​移行します。​この​クラスは​ミリ秒単位での​アクセス速度を​維持しつつ、​コストを​約40%削減できます。​6か​月頃、​動画は​再び S3 Glacier Instant Retrieval に​移行します。​低コストで​耐久性の​高い​保存が​可能で、​必要な​場合には​迅速に​復元できます。​3年後、​期限切れの​ファイルは​自動的に​削除され、​アーカイブを​整理すると​同時に、​使用されない​データへの​無駄な​コストを​防ぎます。

以下は、​この​ライフサイクルポリシーで​使用される​ JSON設定例 です:

Amazon S3 ストレージ
Amazon S3 ストレージ

この​ポリシーに​より​: 

  • 90​日後:オブジェクトは​ S3 Standard から​ S3 Standard-IA に​移行されます。

  • 180​日後:同じ​オブジェクトは​ S3 Glacier Instant Retrieval に​移行されます。

  • 3年後​(1095日​後)​: データは​自動的に​削除されます。

この​ルールに​より、​新しい​動画は​高速、​古い​動画は​低コストに、​アーカイブは​無限に​増えず​最適化されます。

クロスリージョンレプリケーション​(S3 CRR)に​よる​冗長化

長年分の​動画データを​保管する​場合、​コストだけでなく​ 「特定リージョンに​障害が​発生した​場合どう​するか」 が​重要な​検討ポイントに​なります。​Amazon S3 では、​Cross-Region Replication​(CRR)を​有効化する​ことで、​プライマリバケットに​保存された​新規または​更新済みの​オブジェクトを、​別リージョンの​バケットに​自動コピーできます。

この​設定は、​シンプルな​ AWS CLI コマンド で​実行可能です。

Amazon S3 ストレージ
Amazon S3 ストレージ

CRR​(クロスリージョンレプリケーション)が​有効化されている​場合、​vod-storage-bucket に​アップロードされた​すべての​オブジェクトは、​vod-backup-bucket に​複製され、​東京など別の​リージョンに​保存されますメインの​リージョンで​障害や​データ損失が​発生した​場合でも、​放送事業者は​バックアップ側から​ファイルを​復元したり、​ストリーミングを​継続する​ことが​可能です。​災害対策だけでなく、​オフサイトバックアップや​バージョン保護を​求める​コンプライアンス要件にも​対応しています。

コスト分析:VODワークロードに​おける​Amazon S3の​料金

コスト削減効果を​評価する​ため、​チームは​約 18 TB の​ VOD データを​ Amazon S3 に​保存した​場合の​月額費用を​試算します。

すべてを​ S3 Standard に​置いたままに​すると、​1GB あたり月額約 $0.023 と​なり、​合計で​ 約 414 USD に​達します。

構成は​シンプルですが​非効率で、​ほとんど​アクセスされない​古い​動画も​最も​高価な​ストレージクラスに​置かれ続けてしまいます。

一方、​ライフサイクル管理に​よる​ ストレージ階層化 を​有効に​すると、​同じ​ 18 TB が​利用頻度に​応じて​複数の​クラスに​分散されます。

  • 約 4.5 TB の​最新動画は​高速アクセスの​ため S3 Standard に​保持

  • さらに​ 4.5 TB が​ S3 Standard-IA​(低頻度アクセス向け)に​移行

  • 残り 約 9 TB は​長期保管用に​ S3 Glacier Instant Retrieval に​移動

AWS の​現在の​料金に​基づくと、​この​構成では​月額約 195〜200 USD に​抑えられ、​50%以上の​コスト削減を​実現しながら、​必要な​ときには​すべての​アセットに​アクセスできます。

ストレージ区分

 推定容量 

 ストレージクラス 

 単価​(USD/GB/月)

 推定月額コス 

  新規動画​(0〜90日)

 4.5 TB

 S3 Standard

$0.023

~$103.5

  90〜180日

 4.5 TB

 S3 Standard-IA

$0.0125

~$56.25

  180日以降

 9 TB

 S3 Glacier IR

$0.004

~$36

  合計

 18 TB

~$195.75

まとめ

Amazon S3 を​基盤とした​ VOD ストレージモデルは、​スケール・​信頼性・コストを​一つの​仕組みで​両立できる​ことを​示しています。
ライフサイクルポリシー、​マルチティアストレージ、​クロスリージョンレプリケーションを​組み合わせる​ことで、​ワークフローを​複雑に​せずに​インフラコストを​大幅に​削減できます。
Amazon S3 を​活用した​動画ストレージなら、​VOD システムを​持続的かつ費用効率よく​スケールさせる​ことができ、​ストレージを​「固定費」から​「柔軟で​データに​基づく​リソース」へと​変える​ことができます。

既存の​ VOD プラットフォームを​モダナイズまたは​最適化したい​場合、​Haposoft が​現状の​環境を​評価し、​ニーズに​合わせて​スケールできる​ AWS ストレージ戦略の​設計を​サポートいたします。

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